第103章 旅は道連れ
その夜は盛大な歓迎の宴を催してもらい、私達が案内された部屋へと戻ってきたのは、既にだいぶ夜も更けた頃だった。
(はぁ…遅くなっちゃったな。明日も朝早いのに…早く休まなくちゃ…)
「朱里…」
「えっ…あ、んっ…」
敷かれた布団に潜り込んだ途端、信長様に腰を強く抱き寄せられて腕の中へと囚われる。
骨張った指先が頬をするりと滑っていき、柔らかな唇がそっと重ねられた。
ちゅっちゅっと唇の表面を啄むような口付けは、次第に深いものに変わっていき、薄く開いた唇にぐいっと押し込むようにして濡れた舌先が口内に侵入してくる。
「んっ…はっ…うっ…」
柔らかな舌が口内を舐め回し、くちゅくちゅと湿った水音を立てて舌同士が絡まり合う。
腰に回された手は、夜着の上から背中や尻を優しく撫でさすっている。
(あ、んっ…ダメ…気持ちよくて…力が抜けちゃう)
「やっ…んんっ…だめっ…信長様、今宵はもぅ…」
昼間の旅の疲れと宴で飲んだ酒のせいで身体に力が入らず、ふわふわとした心地になっていたところに、信長様から甘い愛撫を受けてしまうと、ずるずると快楽の渦に流されてしまいそうだった。
(こんな状態で信長様に抱かれたら…明日の朝はきっと起きられない!慶次や三成くんもいるのに初日からそんな事態になったら、恥ずかしくて越後まで行けないよ…)
「あ、んっ…ダメっ…明日も早いのです…もうお休みにならないと…あ、ンンッ…」
顎先を持ち上げられて、信長様の顔が間近に迫ると、首筋に噛み付くような口付けが施される。
甘い痛みに、腰の奥がズクッと鈍く疼いてしまう。
「分かっておらんな、貴様は。貴様を抱かねば、俺はぐっすり眠れんのだと、何度言えば分かる?」
「あっ…そんな…でも…疲れちゃったら、明日の朝、起きられない、です…」
「案ずるな、今宵は程々にしておいてやる。起きられぬほど激しくは致さぬ」
「ううっ…」
信長様の『程々』ほど、当てにならないものはないと秘かに思う私の胸の内などお構いなしに、信長様の手は夜着の腰紐をするりと抜き去ってしまう。
「やっ…ま、待って…待って下さい、信長様…」
「待たん」
緩んだ袷を押し開く手を押さえようと腕の中でもがく私に、信長様は意地悪に笑むだけで、待ってくれる気はさらさらないみたいだった。
(んっ、もぅ…初日からこれじゃあ…身体が持たないよ)