第20章 大晦日の夜
信長様が西方の戦より帰還されて、後始末やら何やら慌ただしくしているうちに師走の月もあっという間に日が経ち、年の瀬も差し迫り今日はもう大晦日である。
ここ安土のお城でも女中さん達を中心に新年を迎える最後の準備が慌ただしく行われている。
(安土に来て初めての年末年始……勝手が分からないけど、私に出来ることを手伝おう)
自室を片付けた後、拭き掃除をしていると千代が慌ててやってきて、私の手から布巾を取り上げる。
「姫様っ、おやめ下さいませ!そのようなことは私が致しますので、座っていて下さい」
「えー、これぐらい出来るよ?皆忙しくしてるのに、私だけ座ってられないよ」
「姫様はそれでよいのです!
…そうそう、新年のお召し物は決められましたか?
信長様からまた見事な打掛が多数贈られておりましたでしょう?」
信長様は折に触れ、私に打掛やら簪などの小物やら、身に付けるものを贈ってくださっていたが、新年用に、といつも以上に煌びやかなものが先日また届いたばかりだった。
「う〜ん、嬉しいけど、あんなに沢山着れないよ…」
「まぁ、何を仰いますやら。信長様の姫様へのご寵愛の証しではございませんか。羨ましい限りですわ」
千代はうっとりとした目で私を見ていたが、ふと何か思い出したような顔になった。
「姫様、お暇でしたら天主に新年のお花を活けに行かれては?
信長様もお喜びになられますよ」