第97章 愛とは奪うもの勿れ
信長は朱里の腰を掴むと、下から揺さぶるようにして自身の腰を打ち付ける。
そのたびに、肌を打つパンパンという乾いた音と、ぐちゅぐちゅと滑りを掻き混ぜるような湿った水音が聞こえて、綾姫の頭の中はもう堪え切れないぐらいに混乱していた。
「ぁっ…やっ、ンンッ…はぁ…」
信長が腰を突き上げるたびに、朱里の口から悩ましげな喘ぎが漏れている。
苦しげな、それでいて恍惚としたその声は、昼間に聞いた大人しげな印象の女の声とは全く別の人のようで……
(あぁ…こんな…なんていやらしい…でも…すごく気持ちよさそう…あぁ…)
「んっ…あぁっ…もっ…ぃゃあ…」
ガクガクと身体を揺さぶられながら、喉を反らして激しく喘ぐ朱里を、信長は愛しげに見上げていたが、徐ろに身体を起こして朱里の後頭部をぐいっと押さえると、愛しさを抑えられぬというかのように激しく唇を塞いだ。
「んんっ!んっ…ふぅ、あっ、ふっ…」
全て奪い尽くすかのような激しい口付けに、身体は蕩け、意識までおぼろげになりながら、朱里は身体を震わせて絶頂を迎える。
「くっ…朱里っ…何度でもイけっ…何度でも…」
「あっ、あぁ…信長さま…んっ…信長さまぁ…」
うわ言のように信長の名を呼びながら、力の抜けた身体をくたりと預けてくる朱里を抱き締めたまま、信長はぐるりと身体を反転させる。
身体を繋げたまま朱里を褥へ押し倒した信長は、白く美しい足を左右に大きく開かせて、先程よりも強く腰を打ち付け始める。
ーぐちゅうぅぅ……じゅぶっじゅぶっ…
「うっ…くっ、はぁっ…」
余裕なさげに熱い吐息を吐き、一心不乱に激しい抽挿を繰り返していた信長の動きが止まる。
組み敷かれた朱里の身体も、ビクビクと痙攣しており、信長はそれを宥めるように、ふわりと掻き抱いた。
「朱里…愛してる。貴様だけだ、俺の全てをやる女は」
「んっ…はぁ…私もっ…愛しています、信長さまっ…貴方だけ…貴方だけを…」
互いの存在を求め合い、愛の言葉を囁き合う二人の様子に、綾姫は堪らず目を逸らす。
一瞬、信長の紅玉の瞳に、じっと見られているような気がしてしまい、逸らした視線を再び戻すことはできなかった。
(信長様はやっぱり気付いていらっしゃったの…?そうだとしたら、私は何てことをしてしまったのだろう…)