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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第96章 年越し


いよいよ今日は大晦日

新年を迎える準備に慌ただしくなっていた城内も、午後には漸く落ち着き始めていた。
新年らしい華やかな雰囲気が漂う城内の喧騒から離れて、私は仏間で祈りを捧げる。

(御先祖様、今年も一年無事に過ごせました。来年も信長様や子供達、家臣の皆が怪我や病気などせぬようお守り下さい。
信長様の目指される理想の国づくりが進むよう、見守って下さい)

織田家代々の御先祖様の位牌がずらりと並ぶ仏壇に向かって手を合わせ、固く目を閉じてじっくりと祈りを捧げる。
新しい花が生けられ、上品な香の香りが立ち上る仏間もまた、新年を迎える厳粛な雰囲気が漂っていた。


「……よくもまぁ…そんなに祈ることがあるものだな」

長い長い祈りから、漸く俯いていた顔を上げた私の背後で、呆れたようにわざとらしく溜め息を吐く。

「もぅ…信長様も、そんなところにいらっしゃらないで入ってきて下さい!」

くるりと振り向き、キッと睨むフリをしてみせる。

視線の先には、仏間の入り口の障子に凭れながら腕組みをして私を見下ろしている信長様の姿があった。

「俺には祈ることなどない。死者に祈って何になる?第一、形だけの位牌などに祈っても仕方なかろうが…」

(うぅ…さすが信長様。そういえばこの御方は神も仏も関係ない徹底的な現実主義者だった……まぁ、そういうところが寧ろ潔くて、信長様らしいといえばらしいんだけど…)

理解できないと言わんばかりの呆れ顔で私を見下ろす信長様に、ニッコリと余裕の笑みで微笑んでみせる。

「いいんです、形だけでも。私は、信長様の命をこの世に繋いで下さった織田家の御先祖様に感謝したいだけなんですから」

「っ……」

私だって、特別信心深い方ではない。

仏間で仏様に手を合わせた後、年が明ければ神社に初詣に行き、神様にも手を合わせる。
そうかといえば、南蛮寺に行ったら異国の神様に祈りを捧げたりもするのだから……ある意味、何でもありで、人のことをとやかく言えるほどの信仰心を持ち合わせてはいなかった。

それでも、この世で一番大切な愛しい人の命をこの世界に繋いで下さった織田家の御先祖様には、日々感謝をしている。


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