第92章 帯解き
パンパンっと肌を打つ乾いた音をどこか遠くに聞きながら、急速に迫り上がってくる吐精感に堪えるように、きゅっと眉間に皺を寄せる信長が愛おしくて、触れたくて……朱里は信長に向かってそっと腕を伸ばした。
抱き締めて欲しい、と強請るように……
「っ…朱里っ…」
繋がったまま、深く身体を重ね合わせて朱里を抱き締める。
「ぁっ…あぁ…信長さま…好きっ…」
朱里もまた、信長の背に腕を回し、ぎゅうっと強く抱きついた。
久しぶりに身体を繋げる心地好さと、愛される充足感に、この上ない幸福を感じる。
出産後、吉法師の世話や結華の帯解きの準備で何かと忙しく、家康から夜伽を再開してもいいと言われていても、なかなかその機会がなかった。
信長様も産後の身体を気遣って下さっているのか、深くは求めてこられなかったし、赤子がすぐ傍で眠っている中では、私自身もそうだが信長様もやはりそういう気分にはなれないのかと、秘かに案じていた。
だから……少し不安だったのだ。
このままずっと、信長様が触れてくださらなくなってしまうのではないかと……
今宵、いつもより少し強引に身体を暴かれて、予想外だったけれど嬉しかった。
意地悪な要求は恥ずかしかったけれど、信長様になら私の全てを曝け出せた。
愛する人と一つになれた悦びに身を委ね、身体の奥から湧き上がる快感を逃したくなくて……気が付けば信長の身体に足を絡めて奥を強く締め付けていた。
「くっ…朱里っ…そんなに締めつけるなっ…もう、出るっ…」
「あ"あ"ぁっ…やっ…」
ービュクッ!ビューッ ビュルビュルッ……
(んっ…熱いっ…信長さまの、いっぱい出て……)
身の奥へ向かって勢いよく吐き出された熱い迸りが、下腹部をじんわりと熱くしていくのを感じながら、緊張の糸が切れたように意識が遠のいていく。
(ん……気持ちイイ…信長さま…好き)
「朱里っ…愛してる」
薄れゆく意識の中で、慈しむようにゆったりと微笑む信長を見た朱里は、無意識に自らも、その口元に微笑みを浮かべていた。