第91章 家族
そんな信長の様子を可愛いなと思ってしまい、朱里は自然と頬が緩むのを抑えられない。
(可愛い、なんて言ったら怒られるかな。でも…本当に可愛くて愛しい人…)
朝、別れてから、本当は信長が恋しくて堪らなかった。
熱のせいか、怠くなる一方の身体を抱え、一人きりで天主にいるのは正直心細くて、寂しさで何度も目が覚めた。
だから、先程目が覚めた時に予期せず信長の顔が見られて、本当に嬉しかったのだ。
「信長さま…」
重ねられた手に自分から指先を絡めていくと、信長の手がピクンと震える。
「朱里っ……」
切なげに名を呼ぶ声に感情が昂ってしまう。
これは熱のせいだろうか…身体が熱くて堪らない。
触れて欲しい…はしたなくもそう願ってしまい、繋ぐ手に思わず力がこもると、信長様の方からも強く握り返される。
ーちゅっ
唇に柔らかな感触がして、熱い吐息が頬を震わせる。
ーちゅっ ちゅぷっ…くちゅっ…
「んんっ…んっ、ふっ…信長さま?」
突然の口付けに戸惑いながらも、舌先が唇の輪郭をなぞるように触れてくるのが気持ちよくて、無意識に自分からも誘うように唇を開いてしまう。
強引ではない優しい口付けなのに、何故だか抗えない。
うっすら開いた唇の端から、当然のように挿し込まれた熱い舌にあっさりと絡め取られて、口内を余す所なく舐め上げられる。
互いの舌が絡み合う、くちゅくちゅといういやらしい水音に耳まで犯されるようだった。
「ぁっ…ンッ…はぁ…ダメっ…信長さま…風邪、移っちゃう…からぁ…」
かろうじて残っていた理性でそう伝えても、口付けは深くなるばかりだった。
「構わん。貴様の風邪なら移ってもいい。俺に移して早く元気になれ」
「ああっ、んっ、そんな……」
次第に深くなる口付けに思考を奪われながら、愛しい人から与えられる熱い抱擁に身を委ねる。
熱が上がったかのように、頭のてっぺんから足の先まで火照ったように熱くなっていく。
このまま一緒に溶けてしまいたい。
身を焦がす熱い熱情を身の内に秘めたまま、私は信長様との深くて甘い口付けに溺れていった。