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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第86章 真夏の船祭り


庭の木々から聞こえる蝉の声も徐々に賑やかになり、茹だるような暑さが続いていた。

備後での戦の事後処理が終わると、信長様はまた日々の政務に追われる毎日を送られている。
朝早くから夜遅くまで、各地から届く報告書を処理する傍ら、帝の求めに応じて何度か上洛もなさっていた。


捕縛された足利義昭の処遇について、信長様は朝廷に対して、切腹ではなく流罪を進言なされた。
その話を聞いた私は意外な気がしたものだが、秀吉さんによると、流罪は死よりも厳しいのではないかというのだ。
流刑地の島で一人、死ぬことも許されず、二度と京の地を踏むことも叶わない……それは、かつて将軍と呼ばれた人には耐え難い罰なのだ、と。

それほどに、信長様の怒りは凄まじかったのだ、と。


冷酷非情な魔王の顔の信長様を、私は直接は知らない。
私に対してはいつも、とびきり甘くて優しくて…ちょっとだけ意地悪な夫の顔しかお見せにならないから。

けれど、どんな信長様も愛おしい。
私にとっては、何年経っても変わらずに大好きな人なのだった。


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「天満宮の夏祭り?……って、何?」

昼餉の後、汗ばむような暑さに辟易しながらも自室で寛いでいた私の元に、秀吉さんがやって来ていた。

「『天神祭』って言って、毎年夏のこの時期に行われる天満宮の祭礼があるんだ。天満宮は菅原道真公を祀ってるんだが、祭では道真公の御神霊を巡礼させる『陸渡御』と『船渡御』っていうのが行われるらしい」

「陸渡御と船渡御…?」

初めて聞く話に、俄然、興味が湧いてくる。

「祭りではまず陸渡御で山車や神輿が練り歩き、それが終わると、御神霊を船にお乗せする船渡御が始まる。道真公の御神霊を乗せた『御鳳輦奉安船(ごほうれんほうあんせん)』、催太鼓や地車囃子などが乗る『供奉船』、御神霊をお迎えする風流人形を飾った『御迎船』、商人たちが出す『奉拝船』のほか、祭礼の列に加わらないで自由に行き来する船も出るんだ。祭りの最後には奉納花火も打ち上げられるぞ」

「わぁっ、すごく華やかなお祭りなんだね!」

煌びやかに飾られた沢山の船が川を行き交う中、夜空に打ち上げられる大輪の花のような花火。

想像しただけでも心が華やいでくる。


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