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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第84章 星に願いを


季節は文月に入ったが、未だ梅雨が明けきらぬ蒸し暑い日々が続いていた。
連日、降ったり止んだりのすっきりしない天気で、蒸し暑さは身重の身体には辛くもあったが、今朝は久しぶりに朝から心が浮き立っていた。


「わぁ…すごく大きくて立派だねぇ…」


本丸御殿の中庭に運び込まれた立派な笹竹に、私は感嘆の声を上げた。

瑞々しく青々と目に鮮やかな笹の葉が、そよそよと風に揺れる様は、見ているだけで涼しげだった。



この月の七日は『七夕祝い』の日だ。

七夕とは、織姫と彦星が天の川を渡って、一年に一度だけの逢瀬を許される日のこと。

天帝(神様)の娘である織女(織姫)は、機織りが上手で働き者の女性。天帝が、同じく働き者で牛飼いの牽牛(彦星)を引き合わせたところ、二人はひと目で恋に落ち、結婚することになった。
ところが結婚すると遊んでばかりで、二人は以前のように働かなくなった。怒った天帝は二人を天の川の両岸に引き離し、会えないようにする。織女が泣いて悲しんだため、一年に一度、七夕の夜にだけ会うことを許すようになった、という言い伝えだ。

織女が機(はた)織りの上手な働き者だった……という言い伝えから、この日は設えた祭壇に針や五色の糸などをお供えして、機織りや裁縫の上達を願ったり、広く芸事全般の上達を祈る日でもあった。

それとともに、今年、大坂城では、城の中庭に大きな笹竹が用意され、そこに五色の短冊や様々な笹飾りを飾り付けて、城の皆とともに七夕祝いを楽しもうということになったのだ。


『七夕の日に、五色の短冊へ願いを書いて笹の葉に飾ると、願いが叶う』


そんな言い伝えを、信長様のもとを訪れていた明の商人から聞いた私は、笹の葉とともに風にゆらゆらと揺れる色とりどりの短冊を想像して、居ても立っても居られなくなった。

(どんな願いを書こう…結華や皆と飾りを作って…皆で飾りつけるのも楽しいよね……信長様たちも短冊、書いてくれるかな…)

想像しただけで心が浮き立ってきてしまい、信長様に是非にとお願いをして笹竹を用意してもらったのだ。


「秀吉さん、すごく立派な笹竹だねっ!ありがとう!こんなに大きなもの、運んでくるの大変だったでしょう?」

人の背丈を優に超える高さを誇っている笹竹を、見上げながら感嘆の声を上げる私を見て、秀吉さんは満足そうに笑っている。



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