第83章 心とカラダ
日が落ちて東の空に月が昇り始めた頃、早めに湯浴みを済ませた私達は、まだ薄明るい寝所の中にいた。
「んっ…やっ…あっ…」
ーちゅっ ちゅぷっ…ぴちゃっ…
胸の尖端に熱く濡れた舌が絡められ、尖らせた舌先でコロコロと転がされる。
片方の蕾に軽く歯を立てて甘噛みしながら、もう片方は指の腹できゅっ、きゅっと強めに摘み上げられる。
「んんっ!やぁ…両方っ…しちゃ…だめぇ…」
湯浴み後の火照った身体は、休ませてもらえぬまま、更に熱を上げていた。
(あぁ…湯殿でもあんなに…したのに…)
城下の視察から戻り夕餉を済ませると、信長様は当然のように私の手を引いて湯殿へと向かったのだった。
「あ、あのっ、信長様?もしかして、一緒に入るつもりですか?」
脱衣所で、さっさと帯を解き始める信長様に、慌てて問いかける。
「当たり前だ。女同士なのだから、恥ずかしがることなどないだろう?」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべて、着物を一気に脱ぎ落とすと、続けて襦袢の紐にも手をかける。
「わわっ…襦袢は着て入りましょうよ? は、裸はちょっと…」
「恥ずかしがらずともよい。女の裸など見ても同じだろう?……貴様も早く脱げ。それとも……脱がせて欲しいのか?」
スッと距離を詰められて、背中の帯に手を回されたかと思うと、シュルッと容易く緩められてしまった。
「っ…ああっ!」
「くくっ…無理矢理脱がされるのが好きか?」
「うっ…そんなことは……」
妖艶に微笑みながら、自身の襦袢を躊躇いなく脱ぎ落とすと、肌を隠すこともせず、見事な裸体を惜しげもなく晒される。
朝の着替えの時は、恥ずかしくて俯いていたので、よく見なかったのだが、改めてじっくり見ると、女の私から見てもあまりにも美しく、その完璧な美しさは、いやらしさなど微塵も感じさせないものだった。
(うっ…女同士だって言われても…何だか複雑…)
湯気の立ちのぼる湯船の中で、互いに纏うもののなくなった肌を重ね、余すところなく触れ合った。
柔らかな女性の手で触れられるのは、殿方に触れられるのとはまた違い、至極優しくて繊細で……私は、初めての感覚に身も心も蕩けさせられてしまったのだ。
湯殿で柔らかく解された身体は、寝所に戻っても、その熱が冷めることはなく、信長様は再び、火照ったままの私の身体に触れた。