第1章 桔梗と龍
ひとしきり笑うと改めて私を見て
「ふむ・・・。おんし名は?」
と尋ねる。
「・・・千春と申します。」
私は恐々と答えると男はしばらく思案して
「千春さん、ワシが逗留しちょる宿に来んか?ちっくとその格好は目立つからのう。」
と言われビックリした。
デニムにTシャツ、スニーカーと目立つような格好をしてるつもりはない。
・・・それよりも袴姿に腰には刀のようなものをぶらさげて、いかにも「侍」という風貌のお兄さんのが目立つよ・・・と思いつつ素直にコクリと頷いた。
会って間もない、しかも素性の知れない男。
見知らぬ土地。
本来なら着いていくなんてもってのほかだけど、1人残される不安と何故かこの男は信頼できる・・・と千春は感じていた。
頷く千春を見て男は
「よし、いいこじゃ。
詳しい話しは宿で聞かせてもらうぜよ。」
と笑顔で言うと歩き出した。
「あっ・・・あの、お名前は何て言うんですか?」
私は慌てて追いかけながら訪ねると
振り向いた男が
「坂本龍馬じゃ。」
と満面の笑顔で答えた。