第1章 これは夢ですか?
出会って1時間もたってないとは思えない二人だが、お互い知らないことだらけだったため、しばらく自分達のことについて話して盛り上がった。
正直茅野はほとんど知っていることだったのだが、クイズのように楽しんで聞いていた。
「俺の血液型は」
(Aだよね知ってる!!)
「A型で…
あ!そうだ、俺の個性教えてやるよ!!」
ある程度話すと、勝己は個性を見せてくれると言い、二人で公園に向かうことになった。
当たり前のように手を繋いでくれる勝己。
(あぁ、幸せ
推しの小さい頃を間近で見れて、声を聞けて、名前呼んで貰えて、匂い嗅げて、手なんて繋げて…
私もう一生叶わないと思ってた夢ほとんど叶えちゃった…)
公園につくと、見てろよ!!と言って自慢げに手のひらの二トロをチリチリと爆破させた。
『すっごいねっ!!!!!』
茅野は紙や画面越しでは何度も見ていたが、
生で見るのは当然初めてだった。
『ほんと、…すごい……』
個性、という超能力が存在することにも驚くし、あれだけ見てきた爆破を間近で、そして本物を見れるということに驚いて感動した。
今にも涙が溢れそうな茅野だったが、次の勝己の一言で涙は引っ込み、代わりに汗が吹き出た。
「そういえば茅野の個性聞いてなかった!!
見せてくれよ!!」
(…そうだった!!
ってか本当に私個性あるのかな…!?
だってオールフォーワンだよ??怪しすぎるよね
なんか気持ち悪かったし(失礼)
あったとしてもちゃんと希望した通りなのかな…
そもそも私に使えるか…わかんないし)
チラ、と勝己をみると、目をキラキラとしながらこちらの様子を伺っていた。
(っかわ…!!
これはもう意地でもやるしかないよね
悲しませる、わけには...!!)
単純で、勝己大好きオタクである茅野が、勝己のお願いに答えない訳がなかった。
茅野はすぐさま一度深呼吸をして自分を落ち着かせると、
キョロキョロと辺りを見回し
近くにあった公園の時計に近付いた。
『…時計の針、みててね』
と勝己に言ってから
時計に触れて
ストップ、と頭の中で念じた。
するとピッタリと時計の針が止まり、
次に頭の中でスタート、クイックと念じるとぐるぐると針が動き出した。