第1章 これは夢ですか?
「…じゃあ、君が描いた世界に飛ばさせてもらうよ
特別に、設定されてた通り記憶はそのままにする
あっちへ行ったら、私に感謝するといい」
『よくわかんないけどありがとう?』
そうお礼を告げると次の瞬間、体が宙に浮くような感覚になった。
そして手が眩しい光を放つ。
眩しさに耐えられず、そのまま目を閉じた。
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(今何時??
勝手に目覚めるなんて私どうしたんだろ)
私は目覚まし10回鳴らさないと起きられない女だ。
寝起きで開かない目を、無理矢理開ける。
あまりの日光の眩しさに視界が霞むが、徐々に開けてきた。
そして目に入ってきたのは
『へ…………
ここ、どこ…??』
知らない街だった。
寝て目が覚めたらベッドにいるはずだ。
なのに何故か、そこには知らない家々が広がっている。
そして私は何故か、道端に立っている。
何があったのかさっぱりわからない。
ただ、信じられないことが起きている。
これを信じてしまえば、自分に何が起こったのか、何故ここにいるのか辻褄があう。
(いやいや、有り得ないでしょまさかそんな……
私アニメとか見すぎて妄想しすぎてホントにおかしくなってる
そっか、私まだ夢見てるんだ、そうだわ)
さっきまで夢で聴いていたやつの声も会話も、妙に頭に残っていて、
足元に、足の裏にしっかりとした地面の感覚があって、
背中に当たる風の感覚もいつものようにあった。
それでも、信じられなかった。信じられるわけがない。
夢に見ていたことが現実に起こるなんて。
いくら夢に見ていたとしても、そう簡単に受け入れることのできる出来事ではなかった。
私はよくわからない感情になって、足の力が抜けてしまった。
そのままぺたん、と道端に座り込んだ。
(まさか…
ないよ、無駄に期待して後悔したくないし
信じちゃだめ、違う、これは夢…)
必死で自分に言い聞かせる。無駄な後悔はしたくないのだ。
「おい、大丈夫かっ?」
後ろから、少年の声がした。
私は驚いて、目を見開きながら
恐る恐る振り向いた。