第4章 不良少年誕生
* * *
トタトタと廊下から聞こえる、小さいけれど慌てるような足音。
光己は、それが誰か分かって微笑みながら、ドアが空くのを待った。
『み~つきちゃぁぁああん!!』
光己は勢いよく空いたドアに少しも驚くことなく、
涙目で胸に飛び込んでくる娘のような少女を受け止めた。
『聞、い、て、よ!!
勝己がねっ、教室に入った瞬間にね
てめぇらと馴れ合うつもりはねぇえって!!』
興奮しながら、その愚痴の対象の真似をしたつもりなのか目を吊り上げて口を尖らせて言う茅野。
少しも怖くない、むしろ、可愛い。
もうずっと二人をそばで見てきた光己には、詳しく話を聞かずともお互いの心情まで分かるのだった。
『あんの不良野郎めっ!!
ツンツン頭!!つり目!!みみっちい癖に!!顔面国宝級イケメンで器用でヒーローでかっこいい完璧男の癖に!!
私に友達出来なかったら許さないんだからっっっ』
精一杯の悪口もだんだんと誉め言葉になってしまっている茅野に苦笑いをしながら、
(勝己はほんとに…
早くちゃんと告白でもしてみんなに俺の彼女だから触れんなよ、とか
友達出来て俺から離れて言ったら悲しいから、とか素直に言ってアタックすればいいのに!!
あたしは旦那に妄アタックしたんだから、見習って欲しい!!
本当あたしに似てないんだから!!弱々しいところ旦那そっくり!!)
と思うのだった。
そしてダンダンダン、と大きな音をたてて歩いてくる人物が誰か分かって、二人同時に溜め息をついた。
荒々しくドアが開けられ、爆豪は息を切らしている。
その動作ですら辛いのだろう。
茅野は話すうちにいつの間にか三倍にしてしまっていたのだった。
あわてて勝己を正常に戻すと、ずんずんと近寄ってきた。
「…っ、て、め」
『ふふっ、キツかったんでしょ??
これで反省したっ?』
「あ"?こんなんキツかねぇわクソが!!舐めとんのか!!」
目を60度に吊り上げて、息が切れているのを必死に押さえながら言う爆豪に
光己と茅野は
(めっちゃ息キレてるじゃん説得力なさすぎ!!
どんだけ負けず嫌いだよ)
と内心苦笑いをして
『…舐めてねぇわっ』
とふざけて言った。
そして勝己は、茅野相手には本気で怒れず
目も60度までしか上がらないのだった。