• テキストサイズ

LIvERARTE【BLEACH】

第7章 Nostalgic Noise


違う。そんなはずがない。あの男が、そんな簡単に死ぬはずがない。

幾年も追い続けた憎悪が、復讐という形にしか変えられなかった想いが、たった一つの報せで終わるはずがない。

終わっていいはずがない。

「残念ながら事実だ。隊舎の壁に磔にされているところを、雛森五番隊副隊長含め複数人が目撃している」

磔。

その言葉に、綴の喉がひゅっと細く鳴った。

死体を晒すという行為には、必ず意味がある。見せるため。揺さぶるため。誰かの感情を決定的に壊すため。

綴の脳裏に、穏やかな笑みを浮かべる藍染の顔が過る。誰かの善意の中に毒を垂らすような声。逃げ道を残しているようで、初めから一つしか選ばせない目。

あの男なら、自分の死体でさえ駒にする。

「そのご遺体を目にした雛森副隊長は乱闘騒ぎを起こし、現在拘束中だ」

男は苦々しげに続けた。

「そのため五番隊の上官が応対不能な今、一時的に十番隊の指揮下にある。巡回に問題がないのであれば報告は此方で受けた事にする。旅禍の捜索に合流しろ」

雛森桃。藍染の副官。

彼女が壊れる様子まで織り込み済みだったとしたら。

綴は奥歯を噛み締めた。布の下で唇が白くなる。指先が冷えていくのに、胸の内側だけが不自然に熱い。怒りではない。恐怖でもない。もっと昏く、もっと古いものだった。

「承知いたしました」

頭を下げる。

平隊士として、何の疑いも持たない者として、命令を受けたように。

男が次の隊士へ声を荒げるのを確認してから、綴は踵を返した。旅禍の捜索へ向かうためではない。五番隊隊舎へ、藍染惣右介の死体が晒されているという場所へ。

歩き出した足は、奇妙なほど静かだった。

走ってはいけない。焦ってはいけない。

今この瞬間、誰よりも藍染の死を信じていない顔をしてはいけない。

だが、指先は震えていた。

拳を握り込む。爪が掌に食い込む。痛みはある。けれどそれさえ、今の綴には遠かった。
/ 55ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp