第7章 Nostalgic Noise
綴達は流魂街の住人から聞いた志波空鶴の家に向かう道を歩いていた。夜一が言うには瀞霊廷に入る手段はもう1つあるらしく、その方法は志波空鶴という人物が知っているとの事だった。
志波家か……。
綴は前を歩く兄の方を盗み見る。先程夜一に付けられた引っかき傷が気になるのか指でかいている一護の手を顔から外し、その傷の上をなぞる。
うん、綺麗に消えた。
回道の出来に満足して一護に微笑みかけると、一護からも微笑み返された。
******
市丸と対峙した後、どうしてここにいるのかと子細を聞かれるかと構えていた綴であったが、反して一護が発した言葉はたったの一言だった。
「一緒にルキアを助けに行ってくれるのか?」
その問いに否定する理由もなく綴は頷く。最短距離で愛染を仕留める予定ではあったのだが、それが頓挫してしまった今、過程でルキアを奪還する事になるはずだ。
「なら今は聞かねぇよ。全部終わったら教えてくれるだろ?」
高校から帰る時でも良いからさと笑う一護に綴は胸が締め付けられる。連れ去られていった一護達の仲間と彼女に対する想いを無視し、己が欲望で決着のみをつけようとしていたことをを恥じた。周囲を見回すと、真剣な面持ちで見守る3人と全く世話が焼けると溜息のつく夜一の顔が見える。
「うん、分かった」
気にかけてもらえるような立派な人間では無いのだけれど……。
自分が心配されているのだと改めて実感し降参だと眉尻を下げて困ったように笑った。
「なぁ、なんか随分村外れまで来ちまったみたいだけど……ホントにこっちであってんのか?なーってば」
「うるさいな!長老さんに貰った地図ではたしかにこの辺なんだよ!文句があるなら君が先頭歩けばいいじゃないか!」
「イヤ文句はねえけどよ……」
少し前までは間隔が10mもない程に家が乱立していたのだが、今歩いている箇所には殆ど家と呼べるものが存在しない所謂町外れと呼ばれる様な場所だった。
どうしてこんな辺鄙な場所に住んでいるのかと聞く織姫に、性質によるものだと夜一は返す。はて貴族ではなかったかと考える綴であったが、あれじゃよと夜一が指した建物をみれば納得するしか無かった。
そこには人の腕のオブジェと志波空鶴という名の入った旗が鎮座していた。