第3章 This Story Has Already Begun
____この痛みを乗り越えるために幾年もの時を過ごしたのだろう、幾多の夜を越したのだろう____
それは月の無い夜。その暗闇と対比するように前に立つ白く大きな虚の唸り声が始まりを告げた。
ウォォォォォォォン
視界の端に黒髪の死神と我が兄を認めてはふぅと息を吐く。
「綴!?」
一護が腹部を血で真っ赤に染めて虚と対峙している。駆け寄ってくる様子が視界に入り、綴はそのまま力を抜いて意識を手放した。
「ごめんなさい」
アアアアアアアア
それは誰に向けての言葉だったのか。
その呟きは虚の叫び声によって掻き消された。