第3章 This Story Has Already Begun
「遊子ちゃん、一護呼びに行って貰える?」
「はーい」
綴と遊子が朝ごはんを作り終わり、一護を呼びに遊子を2階に向かわせた。ぼうっと昨日の事故のニュースを眺める夏梨に綴は声を掛ける。
「夏梨ちゃん大丈夫?ご飯食べられる?具合あんまり良くなさそうだけど……」
「ん……多分平気」
青白い顔をした彼女はいかにも具合が悪いですといった様子で流石に小学校に行かせる訳には行かないと綴は固定電話の受話器を取って夏梨に優しく諭した。
「休んだ方が良いよ。電話するね」
「……綴姉ありがと。もっかい寝てくる」
「うん。お大事にね」
ゆっくりした動きで歩き出し2階へと上がる夏梨とすれ違いで一護と遊子がリビングへと入ってくる。
「夏梨、どうかしたのか?」
「体調悪いみたいで……学校休ませたの」
「あいつが体調悪いだぁ!?めっずらしいコトもある……「一護ォ!!大変だ!!チャドくんが病室から消えた!!」」
その時、大きな音を立てて一心がリビングへと駆け込んできた。その様子はとても嘘ではないという事が伺えて、一護は用意して朝食に手をつけることも無く外へ飛び出して行く。
「綴、悪ぃ!!先行く!!」
「う、うん!!分かった、行ってらっしゃい」
いつもは騒がしく囲む食卓も人数が2人も減り味気ない。自然と食べるスピードが早くなり、3人はあっという間に食べ終わってしまった。
食べるはずの主が居なくなったご飯を片付けようとラップを持ってくれば、「それは俺が食べるから残しといてくれ」とラップと皿の間に箸が割り込んで来た。
後は全て一護に任せるといったスタンスの一心に、「じゃあ私は学校行くので皿の片付けもお願いします」と言って綴は皿を洗う分いつもより早く外を出るのだった。
____今日も今日とて''いつも''の日常を続けていく。
次の日、学校で会った茶渡の手にはもうあのインコの鳥籠は無かった。