第3章 This Story Has Already Begun
「ふぅ……」
「お疲れさん」
重症の患者を空座総合病院に搬送し、綴は一息ついた。「俺は患者の容態を見てくるから」と一心は出ていく。
「インコの方は……大丈夫そうね」
「オジチャン ダイジョウブ?」
「大丈夫よ。ここにいるうちは」
綴はインコに返事をしながら水入れ、その籠を一護の方に渡す。
「お、おい……そのインコ……」
「一護、インコ茶渡くんの病室に置いてきてくれる?」
「あ、ああ……」
有無を言わさない様にほぼ強制的に一護の手に渡すととてもオドオドとした様子で持っていく一護を後目に綴は2階へと上がって行った。
「夏梨ちゃん、起きてる?」
夏梨の部屋の前に行き、声を掛けた。その声に反応が返ってくることは無く綴はゆっくりと部屋の扉を開いた。
「ごめんね、入るよ」
ベッドに横たわる夏梨の姿がそこにはあった。顔を顰めていて顔には脂汗が浮かんでおりとても苦しそうだ。それを綴は手に持つタオルで優しく拭き取る。そして夏梨の額に手を置くと綴の手元が薄ぼんやりと光り、夏梨の苦しそうな表情が次第にではあるが穏やかな表情へと変わっていく。
「……ごめんね、これくらいしか出来なくてごめんね」
来た時とは逆で綴が苦しげな表情をしながら静かに部屋を出ていくのだった。