第1章 手を繋ぐのは誰のためでしょう
今までの境遇から空気の変化には人一倍敏感で、ぶっきらぼうに見えがちだけれど本当は誰より繊細なイギリスさんには尚更なものだ。すぐに気づかれてしまうであろうことはわかっている。
元ヤン紳士の彼は、わたしのような子供がしていない経験も沢山しているのだろう。
何人もの女性に触れ、また、国である自分よりもその愛する人が早く、儚く散っていくところを見ているのだろう。彼の時折みせる少し影の入った表情は、イギリスさんの場数の多さから成るものだ。
だからこそ、あの人には手に取るようにわたしの本気が伝わっていると断言できる。
それなのに何も言ってくれない彼が、憎くて愛しくてたまらない。わたしの好きなイギリスさんだな、という気になってしまうのだ。ああ、たまらなく愛しい。狡い。
ここで可愛い顔をして、「わたしと手を繋ぎたくないんですか?イギリスさんにだけ、特別なのに。」なんて言える子なら良かった。
若さで許されるところもあるに決まっている、あの人はなんだかんだ女性と子供に弱いのも知っている。
でもやっぱり今のわたしじゃそんなのは到底無理だ。
....そろそろ顔を上げなきゃいけない。
今更ながら、不自然すぎるもの。
ほら、3.2.1で顔を上げよう。