第5章 パーティの夜※
「ルカさん、もうお帰りで?」
階段を降りた所にあるレストランの出入り口では、丸い耳を持ちほっそりとした体つきの男性が来客の手荷物を運んでいた。
イタチとか、そのあたりの人だろうか。
「うん、今晩は顔見せる程度で良かったから。 僕の荷物、これ? 少し馬車貸してくれるかな。リラちゃん、中で着替えて。外からは見えないから大丈夫だよ」
ルカさんは人の世界でいうタクシーらしき馬車の中に、先ほどの洋服店で持っていたいくつかの紙袋を放り込み、地面に降ろした私を車内へと促した。
袋の中を見てみると女性が身につけるような服や靴が入っていた。前の白い服よりも体の線が出なく、先ほどのドレスよりもずっと楽なグリーンのワンピース。そして歩きやすそうな麻で編まれたサンダルという出で立ちで私は外に出た。
「着心地はどう?」
ドレスを着た時と同じようにルカさんが私に目を細める。行こうか、と声を掛けてくる彼の横に並んだ。
やっぱりあんな服よりもこっちの方がほっとする。何だか気持ちまで軽くなったような気がした。
「楽ちんです、とても! ありがとうございます」
「似合うよ。ああ、ちょっと待って」
ルカさんが私を通り過ぎてすっと前に屈んだ。
「靴紐解けてる」
そうやって跪いて大きな体で蹲っている彼を不思議な気分で眺めた。見渡すとチラチラとこちらを見てくる視線に気付いた。
「ルカさ…」
「動かないで。 うん、もう少し。 よしいいよ」
「…………」
「どうしたの?」
さっきから顔が熱い。
なんでもないです、そう言って彼の先を歩き始めた。
私、熱でもあるんだろうか? 手のひらを頬に当てて首を傾げる。
「さて、何を食べたい?」
「ハンバーガー!」
「えええ……」
嫌そうな顔のルカさんを騒がしい食堂や屋台に連れ回し、お腹がいっぱいになった私たちが宿泊先の宿に着いたのはもう夜中過ぎの事だった。