第5章 パーティの夜※
「ん……」
うっとりと口付けを受けていた私は先に顔を離した彼を追うように見詰めてしまった。
「物欲しそうな顔」
「………」
憮然として熱くなった顔を隠すように手の甲で頬を冷ます。
そんな私をどこか愉しげに見ていたルカさんがもう一度近付いてきて耳元を彼の声が掠めた。
「恥ずかしかったら顔伏せといで」
「え?……あっ」
私の腕を引いたと思うと抱き締めるように胸に寄せ、抱いたままソファから腰を上げた。
「ルカさん……!?」
「今晩はうんと楽しもうって言ったでしょ。 ここはもういいから、さっさと着替えて堅苦しくない二次会に行こう」
そうして膝を掬い上げられるとやはり周囲の視線はとても恥ずかしく、そこから隠れるようにルカさんの首元に顔を伏せる。
「わ、私、歩けますから」
「散々足痛いって言っといて? それに時間が勿体無いよ。 危ないから暴れないでね」
結構重いねえ、と失礼な事を言いつつも大股で会場を通り過ぎるルカさんはあっという間に外に出る。橙色のふんわりとした照明に照らされた階段を足早に降り始めた。
「怖い、です!」
眼下にはもう夜だというのに、週末を楽しもうと市場の中の飲食店を行き来している人で溢れている。
「猫の癖に」
自分で動くのと人に運ばれるのは違うもの。見下ろすとやはり怖くって顔の向きを変える。
彼の肩越しに流れる灯りの筋が細長い尻尾を残して次々と消えていく。