第5章 パーティの夜※
「…らしくねえな、ルカ」
「お互い様でしょ」
「ふっ…」
ケリーさんはやれやれといった様子で席を立ち、すいっと私の手を取った。
「リラちゃん、あんまりそいつに苛められて耐えられなくなったら俺の所に来いよ。俺は大事な女にそんな事しない」
そして私の指先に唇を軽く触れさせるとにっと口の端を上げ、私たちに向けて片手を上げつつ広間に戻って行った。
「……………」
「格好良い?」
「えっ?」
自分の頭の中を覗かれたようで思わず焦り、ケリーさんが座っていた所にルカさんが腰を掛ける。
「彼、ケリー」
手渡された飲み物を受け取った。
「はい。でも、一般的な話で」
口にするとアルコールは入っていないようで、少し酸味のある味がする。
喉が乾いていたのでこくこくとそれを飲み干した。
「実際よくもてるよ。種族的にあっちも良いらしいし」
「どっちですか?」
「まあ………いいとして。昔、付き合ってた女の子彼に取られちゃったりね」
「ルカさんがですか?」
「うん。だけど逆も然りでお互い様。だから今もこうやって友人やってる訳だね」
色々あるんだな。私には難し過ぎてあずかり知らない世界らしい。
「で、何?さっきの話。僕ってそんなにきみの事苛めてる?」
「ルカさんもしかして、自覚無いんですか」
「あんまり無いな」
あっさりとそう言うルカさんにグラスを取り落としそうになる。
「初日の悪ふざけ以外は」
「だっ……て、しょっちゅう触ったりとか私の事からかったり」