第5章 パーティの夜※
「立襟で露出を少なく上品に、パートナーのルカ様の目の色に合わせましたのよ。お嬢様の髪と瞳が丁度反対色でいらっしゃいますし、肌の白さと映えること」
「これは……本当にお人形みたいですねえ」
そう言っての鳥の夫婦は褒めてくれるのだけど、スカートは長く分厚い生地のせいで重いし裾を踏みそう、何しろ靴の踵が高過ぎる。
既にスーツに着替え、紙袋を幾つか下げているルカさんが目を細めて私を眺めた。
「あの、靴、が歩きにくくて」
「いいね。 って、ルイスさんとなに騒いでたの?」
「……言いたくないです」
正装の彼も品やスタイルの良さが余計に際立ち素敵なのだろうけれども、こちらにはそれを愛でる余裕は全く無い。
一歩一歩そろりそろりと足を出しては前に倒れそうになる私に苦笑しつつ、ルカさんは掴まって、と自分の腕を差し出した。
「……ルカさん、これで行くんですか?」
「大丈夫。 似合ってるよ」
「……でもこれ歩けないんですけど」
「ん、少しメイクした? でも口紅だけでいいと思うな」
「……お腹になんか巻かれてご飯も余り入らなそうですし」
「それで髪も上げてもらった方がいいね」
駄目だ会話になってない。
その後またルイスさんに髪を弄られ、その出来に満足気なルカさんを恨めしそうに見ながらその店を出る。
お尻近くまでの長さの髪を纏めたので頭が重く更にバランスが悪くて歩き辛い。
お店の前の階段を無事に降り切ってほっとしている所で、ルカさんが申し訳なさそうな表情を私に向けた。
「ごめんね。実はちょっと、いつもと全然違った環境で気分を替えたくて。どうしても滅入るから」
「…………」
ルカさん。
少しの間一緒にいて分かった。
この人は一見人当たりが良さげに見えて実はとても好き嫌いが激しい。
きっとビー君の事が好きだったのだろう、一緒に旅をしようという位には。
ルカさんと同じに物知りで働き者、それでいて謙虚な彼と話している時のルカさんはとても楽しそうだったから。
そんな彼の寂しい過去を視て、無事に転生はしたのだとしても私はもっとビー君の、彼自身の笑顔を傍で見てみたかった。
彼と友だちになりたかった。
こう思っているのは私だけだろうか。
「大丈夫です」
私がそれだけ言うとルカさんが柔らかい笑みを向けてきた。
「せっかくだから今晩はうんと楽しもうね」