第5章 パーティの夜※
「こら、ルイス。お客様に失礼だろう。このお嬢様に見繕ってやってくれ。ええと…」
「夜の会食だからイブニングでお願いするよ」
嬉々としたルイスさんに背中を押され私はお店の奥の通路から更に扉を隔てた別室へ連れて行かれた。
絨毯と鏡張りの部屋。
お化粧やなにかをするドレッサーのような家具も並んでいる。
そうしてしばらく。
拉致られて着せられた服が、ペンキかなにかをぶちまけたみたいに床に何十着と散らばっている。
「着せ替え遊びみたいで楽しいですわ。 ここに来られるのって年配の奥様方が多くて。 仕舞いに入らないっつってんのに無理矢理足突っ込むもんだから売り物まで破きやがって……あら、私ったら失礼」
どれも着るのも脱ぐのもルイスさんの手を借りなければならない程難儀なもので。
しかも破いたりしたらとても高そうなレースやなにかの細工の入った洋服たち。
私はすっかり疲れてしまっていた。
そしてルイスさんはなぜかその間にちょこちょこ洋服とは関係なさそうなアイテムを挟んでくる。
下着が見えそうな短いスカートに白のエプロン?
ピチピチで窮屈そうな薄い…下着?
それから上下が分かれたフリルだけのこれはなに?
「あの、ルイスさん。これ服じゃないと思うんですが」
「あの!!これ、胸とかほぼ紐みたいなんですけど」
「あっ、自分で出来ますから!」
「さ、触らないで下さい!や!お尻それ、揉んでますからあ!!」
そんなこんなでぐったりと疲労困憊した私に最終的に着せられたのはシンプルなブルーのドレスだった。
「若い子の肌はいいわねえ…」
そう言うルイスさんの三白眼気味の目が怖かった。
だけどこんなななら、あんなに試着をする必要無かったのに。