第4章 二人目 チーズ職人ビー
しばらくそんな彼の様子を見守っていたけれど、ルカさんがベッドにもなる折り畳まれたソファを広げてビー君の隣に足を伸ばした。
「リラちゃんもおいで」
頷いてビー君を挟み両側に滑り込む。
何となく彼を今一人にしたくなかった。
「もしかして、ルカさんにも視えたんですか?」
「うん。きみと思念を繋いでるせいかな。 ……堪んないね」
沈んだ声だった。
「またきみに断りもなくビー君を誘っちゃったけど。……多分、彼の寿命はもうすぐだ。なのに、もうあんな事を繰り返させたくなくて」
「構わないです、そんなの。ビー君が望むなら。いえ、望んでくれたらいいと思ってます」
彼に感じていた違和感。
ずっと私たちに嫌われまいとしていたのだろうか。
『楽しいなあ』
キッチンでそう言っていた彼を思い出した。
「…………」
「泣いてるの?」
ルカさんがビー君越しに私の髪に指を通してきた。
私たちはそれ以上何も話さなかった。
ただお互いにそっと、寝息を立てているビー君の手を片方ずつ握り眠りについた。