第4章 二人目 チーズ職人ビー
オマケで引き取られた僕。
ガッコウにはたくさんの子供が居た。
彼等は騒がしくて楽しそうな様子だった。
僕は教室のドアの傍に置かれ、子供達は来たばかりの僕をキラキラした目で見た。
僕は嬉しかった。
ここに来て良かったと思った。
乱暴に体を掴まれて痛くても我慢した。
だけどその子達はすぐに他の遊びに夢中になって、僕は再びいないものとして扱われた。
そのうちガッコウが長い夏休みになり、最初は僕にヒマワリの種をやりに来てくれた子も間もなく来なくなった。
教室は暑く、昼間の窓の外ではジワジワと蝉が賑やかに鳴いている。
彼等は一生の長い間を暗い地中で一人で過ごし、一週間だけ生きて伴侶を見つけると聞いた。
僕は蝉を見たことがないけど、彼等の気持ちが解ってあげられると思う。
このケースの中から出してくれないかな?
朝も昼も夜もまた次の朝も幾日も、僕は狭いケースの中で過ごし、その箱と僕の体は汚れて乾いていった。
誰も居ない
誰も僕を見ない
誰も僕に触れない
誰も僕と話さない
僕の世界には誰も居ない
さようなら。
僕のオマケの短い人生。
もう動けなくなってじっと目を閉じてると小さなハエが僕の体に卵を産みつけに来て、嬉しくて思いがけず、僕の乾いていた目の表面が潤んだんだ。
「こ、んにちは。もし、良ければ……」
僕と友だちになってくれるかな?