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小さな愛【R18】

第4章 二人目 チーズ職人ビー




「ごめんね、僕のために。……僕が、あんな」

ビー君が耳と目を伏せて私の腕を消毒する。
こんなの大したことの無い擦り傷なんだけどな。


「でもビー君、なんであんな奴らと関わってたの?」

「僕には友だちが居ないんだ……もう、ずっと前から。女の人も、リラさんみたいにちゃんと話したことがない」


ルカさんの問いに彼は益々その小さな耳を折りたたんだ。


「初めて会った時、彼らはとてもお腹が空いてる風で、ここに来て間も無い様子だった。僕がご馳走すると……凄く嬉しそうで、感謝してくれて。『ありがとう、お前は俺たちの友だちだ』って、そう言ってくれたんだ」

「ビー君があそこであの人たちに渡していたのは? なんか、青い石みたいな感じだったような」

「ここから西で採れる鉱石なんだけど、ここが出来る前に居た、そこの鉱山を僕は少し持っていて。それがこちらでは売れるらしくて」
「鉱山ねえ。…あの辺の山が人手に渡ったのなんて、もう遥か昔の事って聞いてるけど」

「だけど、あの人たちは」


ただビー君を利用していただけじゃないの。 また怒りがぶり返してきた私が言いかける前にルカさんが口を開いた。


「ビー君、よかったら僕たちと一緒に行かない?」

「え……?」

「きみはこれ以上ここに居ちゃダメだ。正直言って僕は、元々さして他人には興味が無い。だけどきみを放っておけない」
「で、でも僕」
「ああいう手合いの奴らは一旦味をしめるとまた寄って来る」


迷っている様子で黙って俯く彼はいつも通り無垢な表情でただ瞳だけが濡れて光っている。
そんなビー君の体に手を回し、彼を胸に包んだ。

さびしくて優しい。
成弥もそうだった。
孤独を小さなその身に抱えて、それでも暖かい手を他人に伸ばす。
成弥はそうして私を抱き締めてくれた。


「友だちだから。ただ好きだから。見返りも理由も要らないから、一緒に行こう」

「リラ、さん……」

「…………」


ふいに、前にルカさんを『視た』時の感覚。
チカチカとしたそれがまた近付いてきた。


あ、また私─────

以前視たそれは痛みと絶望、嫌悪しか無かった。
抗おうとするも絡め取られて。


そして今度はビー君の記憶の旅に出る。




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