第4章 二人目 チーズ職人ビー
「自分で加工して作るともっと価値が上がるって聞いたよ」
「俺らがなんでそんな家持ちみたいなことをしなきゃなんないんだよ、なあ?」
彼らの会話や表情の、ちくりとした悪意の様なものに胸がざわつく。
「おう、そっちみたいに腐るほど暇がある訳じゃねえ……じゃあ、明後日も持って来いよ。俺たちは友だちだろ?」
「え?でも……今僕の所にはお客さんもいるし」
「お客?名無しで家持ちのお前なんかの所にか?」
男性たちは顔を見合わせて笑う。
馬鹿にしたような表情で。
ビー君は何も言わずそれに遅れて彼らと一緒に小さく笑った。
な、何だろう、物凄くむかむかする。
「ちょっと!!」
思わず姿を現し声を荒らげた私に、その場にいた男たちの視線が集まった。
「リラさん!?」
「誰だ?お前」
「私がビー君の所でお世話になってるお客!さっきからあなた達、失礼じゃない?」
「ビーって誰だよ?」
その中の一人が少し目を見開き、興味をそそられた様な表情でこちらに近付いてきた。
「へえ、この辺じゃ見ない……いい女だな」
「リラさん!この人たちは大丈夫だよ。僕の友だちだし……何するつもり!?」
「…………っ」
その男に上着の襟元を乱暴に掴まれ、私は圧迫される息苦しさと不快感に顔をしかめた。
猫より少し尖った耳と太さのある尻尾。
口を開くと普通よりも犬歯が目立ち、加えて力が強い。
犬族か何かだろうか?
「止そうぜ、まだガキだろ?」
「そうでもない、体は充分」
胸元に伸ばされようとしている手の気配にぞわりとした。
捕まえられている上着を犠牲にし、するりとそれを脱いで跳ね除ける。
それならばと前から捕まえようと迫ってきた男から身をかわすためにまた後ろへ跳んだ。
「チッ、こいつ!すばしっこいぞ」
「リラさん!! 止めて、その人に手を出さないで!」
「待てよ。じゃ、今週はこの女で手を打ってやる」
「まあ、たしかに……こんなのは滅多にお目にかかれないな」
最初着ていた薄手の体の線が出てしまう衣服だけになった私を見、相手たちの顔色が変わったようだ。
舐めるような視線が気持ちが悪い。
だけど、どうしよう。