第4章 二人目 チーズ職人ビー
「おはよう、ビー君。あれ、ルカさんは?」
「リラさん、おはよう。荷運びしに先に工房に行ってるよ。僕も行かなきゃだけど、その前に少し市場で用事済ませてくる。朝食はテーブルの上にね」
「いつもありがとう」
ビー君は照れた様子で、でも嬉しそうにじゃあ、行ってくるね。と出かけて行った。
もくもくとパンに新鮮なチーズをつけて食べながら、テーブルの上に置いてある小さな鞄に気付いた。
ん? 確かこれ、ビー君が工房や外へ出る時いつも持ってるやつだ。
忘れたのかな?
先ほど出て行ったばかりだし、追いかけたら間に合うだろう。
私はそれを手に取り席を立った。
ここに来る前に通りがかったけれど、家を出て市場の場所まではそう遠くない。
週末に開かれるという大きなものはまだ知らないにしても、通常は大通りにいくらかのお店が並んでいる程度だ。
私の思惑通り、平日の朝の中途半端な時間。
閑散としたそこに小柄なビー君の姿を認め声を掛けようとした瞬間、脇にある路地に入っていった。
「…………?」
あんな所に何かあるのかな。
不思議に思いその後を追う。
「遅かったな」
「……ごめんね。家の事で忙しくて」
「相変わらず、羽振りのいい事で羨ましい限り」
「持つべきものは家持ちの友だちだよな」
「友だち……」
その言葉でビー君の目尻が下がり、そのあと照れ臭そうに彼らから視線を外した。
三人の……あまりこういっては何だが、身なりの良くない男性にビー君が囲まれている。
彼らのそんな様子に何か不穏なものを感じて路地の入り口で様子を伺った。
「それで、今週分は?」
「うん、……でも、今回は余り手に入らなくて。最近採掘量が良くないみたい」
そう言って布の袋に入った何かを男性に手渡すと、それをひったくるように相手が中を確かめている。
「これじゃ食えて、数日分ってとこだろ」
相手の手のひらにあるのは青い色の石。紫がかった、でも濃い色の綺麗な。
よく分からないが宝石とか、そんなものだろうか?