第4章 二人目 チーズ職人ビー
「リラさん達、急いでる? よければ今晩はチーズ料理をご馳走するけど」
「本当に!? 嬉しい」
「それじゃ僕も手伝うよ」
「真っ白チーズ、黄色いチーズ、トロリと溶けて、美味しいよ!」
私とビー君は即興でチーズの歌を作り、今晩の食材を物色して準備に取り掛かった。
料理の間ルカさんは少し買い出しに行ってくる、と外に出た。
「さあ、何しよっか?」
エプロンを借りてご飯作りのお手伝いをしようと私が聞くと、ビー君は野菜とナイフを私に手渡した。
「リラさんありがとう。 じゃこれを大き目のサイコロに切ってくれる?」
「はい!」
奥の洗い場でごそごそ作業していた彼が暫くして戻ってきた。
斧を振り下ろす勢いで食材を切りつける私と調理台の上の手当り次第ぶつ切りされた元野菜達を数度、交互に見て口を開いた。
「リラさん……お料理したことある?」
「実は無い、けど、なんかおかしいかな」
「うーん、まず皮を剥こうね」
「……はい」
「まずこうやって包丁を持って…」
うう、呆れられてしまった。
こんな小さい子に。
ん? 小さい?
「うふふ」
「どうしたの?」
ビー君が野菜の修復作業をしながら微笑んだ。
「楽しいなあって思って」
「ビー君って、あの、まだ子供?」
「どうかな。 元の世界では発情期はもうあったから少し違うかも。 ハムスターは成長が早いし。 ここに来ると見た目の成長は止まっちゃうみたい」
そうなのか。
「ここへは長く居るの?」
「さあ。 もう何百年かな。 ……よく分からない」
彼の表情が一転して少し曇った。
私なにか悪いこと言ったのかな。
「でもそれ、凄いね!」
「え?」
「ビー君は私よりもずっと色んなこと知ってるんだね。 チーズの作り方もお料理も。 自分で生きていけるって凄いことだと思う。 羨ましいな」
「そ、そうかな」
「うん。絶対そうだよ!」
私が笑顔で彼に笑いかけると、ビー君もそれに釣られたように照れながらにこっと笑った。