第4章 二人目 チーズ職人ビー
「そっかぁ」
どうしようかな。
また他のところを探してみるといいのかな。
ビー君はそんな私をじっと見て訊いてきた。
「リラさん理由を聞かないの?」
「え? んん?」
意外な質問に私は理由を探してみるも、結局どう言えばいいのか分からなくて首を傾げる。
「実はね、私もあまりよく分からないの」
「そうなの?」
「うん。 それにビー君が嫌なら仕様がないし」
どちらにしろ仲良くなるのにもし一方が拒絶しているのなら、そんなのは不可能だもの。
「い、嫌じゃないよ!」
少し大きな声を出されたので驚いて彼を見ると、はっとした様なバツの悪い表情でビー君は続けた。
「嫌じゃないよ。 リラさん凄く可愛いし。 ……だけど僕、まだしたこと無くて。いつも緊張して、うまくいかなくて女の人を怒らせちゃうんだ」
「……………?」
話の内容がよく分からない。
だけど俯き加減で赤くなりながらぼそぼそと告白するビー君を見詰めながら、私は何かこう、胸がきゅうっと小さく締め付けられるような感覚に襲われた。
何だろうこの気持ち。
私、お腹空いてるのかな。
「怒られるのは嫌だなあ」
「リラさんも?」
「うん。 私、気が利かないから、元の世界では時々それで嫌な思いをしたんだ」
昔、成弥と住んでいた義理のお父さんだった男性を思い出す。
大きな体に大きな声。
私の姿が彼の視界に入ると彼は忌々しそうに、時には手を上げて私を遠ざけた。
「怖くて悲しい」
「うん、悲しいね」
私は心の奥に閉まっていたほの暗い思い出に馳せながらしんみりとした気分でビー君に同調した。
とはいえ、彼がどういう悲しい思いをしてきたのかは分からないけど。
「あ、でもね。 成弥は……成弥って、私の飼い主なんだけど、時々怒るけど怖くないの」
「怖くない?」