第3章 一人目 案内人ルカ
キスには色んな種類がある事を、今日私は知った。
その感触の心地良さに、今度は薄らと目を閉じそうになった頃。音もたてずそれが離れた。
「これからもよろしくね、リラちゃん」
そう言ってこつんと額をくっつけ、目を合わせて彼がそんなことを言う。
「明日の夕方位に出発するとして、今晩は一緒に寝ようか」
「……………」
この余裕の表情は、また私をからかうつもりなんだろうか。
「………い、らない、です」
「遠慮すること無いのに」
「遠慮なんかしてないですから!」
結構な剣幕で意地になる私に、ルカさんはそれ以上言い返さず寝室の出口に向かい苦笑した。
「いいけど。リラちゃんそれ、威嚇してる雌猫にそっくりだなあ」
「放っといてください」
「思い当たらなかったけど、きみは一人で寝るのに慣れてなかったんだね。もしまた悪い夢をみたらいつでも呼ぶんだよ」
「…………」
「おやすみ」
そうやって寝室を出て行く彼を、私は何とも言えない気分で見送った。