第3章 一人目 案内人ルカ
ルカさんはシーツに目を落としながら続けた。
「きみが好きだから…というか、初めて繋いだだけあって、多分気に入ってるから。単純に興味があるから。見届けたいから。……猫族は基本的に犬みたいに自分を犠牲にしない。僕は婆ちゃんを好きだったけど、それはあの家や僕にとっていわゆる『心地良いもの』の一部だったようにも思う。でも、きみは成弥って人間に執着してる。そもそも人間に恋するってのも不可解なんだけど、なんだかね。上手く言えないけど、僕の『想い』に関係もあるのかなとか」
私はルカさんの言葉にじっと耳を傾けていた。
正直彼の最後の理由は私にもよく分からないけど、私や成弥にとってはこの申し出はとても良いことなんだろう。
それに……
「ん?」
私はルカさんの胸にすり、と頭を擦り付けた。
「ありがとうございます、ルカさん。私からもよろしくお願いします」
ルカさんは何だかお兄ちゃんみたいだ。
とても安心する。
すると、上から笑いを含んだような声が降ってきた。
「きみって本当に……」
「………?」
「さっきの続き、忘れてない?」
さっき?
しばらくうーん、と思い巡らしてベッド上での光景を思い出し、また心臓が跳ねた。
そして思わず高速でずざざとベッドの端に逃げる私を見てルカさんが口角を上げる。
ちなみについ擦り付いてしまうのは猫(というか私)の癖である。
「僕がきみをゆっくりとちゃんとした女性にしてあげるよ。お礼に」
「お、お礼……?」
お礼、お礼って、何の?
そう私が言う前に、ルカさんは私の頭の後ろに伸ばした手を自分の方に引き寄せた。
「っ」
若干強引なやり方の割に、先ほどよりなぜか親密で、優しい口付けを落とされる。
軽く短い、でも丁寧なそれを数回ほど繰り返すうちに、私の唇がしっとりと濡れていく。