第3章 一人目 案内人ルカ
「……………」
唇に降ってきた彼の口付け。
柔らかな器官同士が擦れて、私はぴくりと顎を引いてそこから離れる。
そしてらまた追いかけられて、やんわりと食むように重なってきた。
先ほどのソファでのキスとは違った、そうしている内に時を忘れるほどに痺れて。
自分の目尻が濡れてるのが分かった。
「……ふ…」
「以前にこうやってきみに触れた時」
……そうだ。
あの時のお風呂の感じと似てる。
ルカさんには今私は、体重をかけられてない。にも関わらず、息苦しくて呼吸が浅くなる。
「……自分の体がどうなってたか覚えてる?」
目を逸らしても熱くって、小さなマグマみたいに体の内に赤い塊が出来る。
こんなの知らない。
「………っン」
ちゅう、と吸われた後に薄らと目を開けると息がかかる距離に彼の瞳があった。
何かを言ってる。
『足りない?』そう唇が動いた気がする。
だから私は首を振る。逆光で暗い灰色の目が微かな半円を描いてそんな私を否定した。
嘘つき────
うなじと髪の間に差し込まれた彼の手に段々と力がこもってきたのを感じたその時、頭の中にチカチカと微かな映像が現れた。
それは光が集まるにつれハッキリとした形になって、私に向かって流れ込んで来る。
「─────?」
『は────なんで今かな』
溜息とも呆れ声とも聞こえるルカさんの呟きが耳に残った。
急速に冷える熱と共に私の意識もそちらに絡め取られる。
何だろう、これ?
浮いている自分がその画を上から覗いているような感じ。
小さい和室の部屋が見える。
聞こえる雑多なその声が大きくなる。
これは────────?