第3章 一人目 案内人ルカ
ガラスの細長い花瓶みたいな器にコップが二つ乗っている。
「なんですか?」
「さっきのお詫びに。いいもの」
「?」
ルカさんが部屋にある、鏡台にそれらを置いた。
持っていた瓶に入った、なにやら金色の液体を注いでから、そのグラスを体を起こした私に寄越した。クンクンとその匂いを嗅いでみる。
「!!」
これ……
久しぶりのこのふわふわ感。
「またたびですね!」
「当たり」
ほんの少し注いでもらった、ちょっとトロリとしたその液体をこくん、と飲んでみる。
またたびの木と甘い蜂蜜みたいな、あと喉がかあっと熱くなるような、変わった味がする。
「リラちゃんはお酒飲むの初めてかな」
ルカさんも自分の器に注いだそれをゆっくりと口に含む。
「はい。でも美味しいれす」
「っと、ほら。もっと少しずつ飲んで」
即効性のあるまたたび効果で、早速ろれつが怪しくなりつつある私を眺めながら仕方が無いなあ、という表情で微笑むルカさん。
「ごめんね、さっきはからかって」
理由は分からないけれどまたじわ、と私の目に涙が溜まってきた。
どうしたんだろう?私。
「ほらまた泣かないで。……さっきはちょっと、僕も苛ついてね」
「……ルカさんが、ですか?」
「リラちゃん、きみ最初から自分自身の事を話したがらないね」
グラスを持ったルカさんが私がいるベッドの端に座る。
「きみがそんな風に頑ななのに、だれか他人と心を通わせようとするなんて、無理なんじゃないの?」
「あ……」