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小さな愛【R18】

第3章 一人目 案内人ルカ



夕暮れを待たないうちに辺りが暗くなった。

音と空気の匂いで雨がまだ降っていると分かる。
群青色と灰色が混ざったような、私もそんな湿った色の雲みたいな気分だった。


「うぅ………」


寝室の枕に突っ伏して、グズグズしながら私は悶えていた。

泣いてしまった。
それさえも今はとてつもなく恥ずかしい。
成弥や知佳のことを聞かれて動揺して。そしてキスされてテンパるとか、からかわれていちいち真に受けるとか。

そもそも動物同士でも舐め合ったりするから、親しい人間同士がキスをしたりというのは理解しているつもりだった。成弥の顔を舐めたり、そんなので慣れていたし。
けれどルカさんとのそれはどこか全く違う感じがした。……人になったから?
それで笑われて、色々びっくりして恥ずかしくて泣いてしまったのだと思う。


……だからルカさんは、そんな私をお見通しで、私の事を子供だと言ったんだ。

確かに私自身の役目もある。
だけどそれとは別に私が彼に感謝していたのは本当で、伝えたいと思っていたのに。
彼の手を払い除けた時、滅多に感情を表に出さないと思ったルカさんの驚いた表情を思い出した。
あんな事もするつもりなかったのに。


「………」


こんな私じゃ、ルカさんの役に立ったり友だちになったりなんて出来ない。


「……だって私じゃ全然釣り合わないもの」

「何が?」


その声にビクッとして心臓が跳ねた。


「リラちゃん、ちょっといいかな?」


ルカさんが話し掛けてくる声と一緒に、戸口の辺りからがちゃがちゃという音。
それが部屋の中心にあるテーブルに近付いてきた。

若干決まりの悪い心地で抱いていた枕の隙間からそちらにこっそりと目をやると、ルカさんの手に乗っているトレイが目に入った。


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