第3章 一人目 案内人ルカ
私は肘を付いてうつ伏せに上体を起こし、彼に伝えようとしていた言葉を口にする。
「あの、ルカさん」
「……ん?」
「色々、ありがとうございます」
「どうしたの、いきなり?」
「私、ここに着て最初がルカさんの所で本当に良かったです」
若干からかわれた感はあるけど、初対面から快く迎えてくれた。
全く他人の私に色々教えてくれた。
そんなことが当然ではない位、私にも分かるつもりだ。
だけど彼はそんな私をちらりと見上げ、本の背表紙を表にして自分の顔に被せてしまった。
「……単純だね」
「え?」
そう呟いた彼の口元は微かに微笑んでいた。
ふと思ったけど、そういえば私はルカさんがあまり感情的になっている所を見た事が無いと気付いた。
……もしかして、照れているとか?
それを見ているうちに何だか嬉しくなって、こちらの口の端もつられて上がる。
「……ねえ、リラちゃん」
「なんですか?」
「ナルヤってのが元の飼い主?」
「えっ!?」
なんで知ってるんですか?と思わず変な声を出してしまった。
「寝てるときに時々うなされてるから。……いいんだけど、リラちゃんて飼い主の事好きなのに、それで何かうなされる事があるのかなって」
ルカさんはそう言いながら手を伸ばし、私の髪にすいと指先を通す。
「あと、時々泣いてるよね。何があったの?」