第3章 一人目 案内人ルカ
「手持ちにワインがあるけど」
「いいね、見せてくれ」
男性は赤い液体の入った瓶をルカさんから受け取ると蓋をとってクンクン匂いを嗅いだ。
「新しい葡萄だね。 こいつらに合いそうだ。 こっちはこれでいいかい?」
「いいよ。 ありがとう」
ルカさんが魚を少しと、同じもので昨日保存用に仕込んでおいたという干物を受け取った。
「良い一日を」
手を振って私たちは元来た道を引き返す。今晩は魚のワイン蒸しかな、などとルカさんが言っている。
「さっきのリスの彼もそうだけど、家持ちじゃない動物は、手軽に何かを捕って生活してる者が多いよ。 それらを使って作るのは大体僕らの役目だね。ちなみに僕はワインや果実酒を作ってる」
「そうなんですね」
草木と果実の混ざった香り。だからルカさんからはあんな不思議な匂いがしたんだな。
ルカさんみたいに家を持っている人は、サル族じゃなくても長年ここにいるおかげで器用なヒト型が多いらしい。家の家具なども簡単なものなら作るものだと教えてくれた。
「ここも色んな土地があるからね。雪深い所とか、山里とか…住む場所も大体種に対応はしてるかな」
色々な種族がいるのに、ちゃんとバランスが取れてるんだなあと妙に感心してしまった。
それから周囲を少し歩いてから帰路についた。
通りがかる人々の元の動物当てっこなどをしつつ。
またルカさんに色々ここの事を教わったり、たとえば好きな食べ物なんかの他愛ない話をしながら。