第3章 一人目 案内人ルカ
まだ明け方近く。
猫の時よりも早くに私は目が覚めた。
その夢は、厳密にいうと夢でなく、私の記憶。キルス様と初めて会った日、彼が帰ったあとにクッションの上で微睡んでいた時の事だった。
慣れない体に視線を落とし昨日の出来事を順になぞり、私は今元の世界から遠く遠く離れた場所にいる事を思い出した。
ルカさんが用意してくれたふかふかのベッド。だけど私はあの和室の、ぺちゃんこのお布団が恋しい。
同じようなオレンジ色の朝焼けの空。だけど私は窓の外からいつものように彼を見送りながら、ジョギングから帰ってくる成弥を待ちたかった。
「成弥…………」
音には出さない声でそっと私はその名を呼び、そしたらどうしようもなく心細くなる。
けれどそんな私を支えているのもやはり成弥の存在だった。
「待っててね。……きっと助けるんだから」
そうやって外が明るくなるまでベッドの上で膝を抱えていた。