第3章 一人目 案内人ルカ
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私がまだ小さい時。
私たちを育てる体力が無かったお母さんは、長い大きなつららの出来る寒い時期に病気で死んだ。
泣いてお母さんの傍から離れなかった兄弟たち。
だけど私は一人で人の匂いのするところへ向かった。
お母さんは昔人間に飼われていたのだと聞いていた。
そこは暖かくてお腹が空かない場所なのだと。
成弥が私を見つけた時、当てもなく彷徨っていた私は痩せて飢えていた。
そして彼も、同じように小さく汚れた格好をしていた。
そんな彼との暮らしはお母さんが教えてくれていたようなものでは無く。
まだ少し雪の残る、春先の事。
成弥を虐めていた大人が彼と私を狭くて暗い所に閉じ込めた。彼はまだ小さかった私を、外が明るくなるまで自分の痩せた胸元に入れて暖めた。
『暖かくてお腹が空かない場所』
とうとう私はそれを見付けたのだと理解した。
『俺は血の繋がらない父親と暮らしていて、物心がついてからずっと一人だった。 お前を拾ったのは俺だから、俺がリラを守る。 俺はここを出て生きる』
翌日に成弥は私以外の全てを捨てて、程なくして新しい人生を始めた。
あれから大きく大人になった私。
猫の私は人間よりも少しばかり体温が高い。
だから、寒い日には、今度は私が成弥を暖めてあげる。
私が人間になる。
それはとても難しいってキルス様は言ったけど、もしも人間になれたら。
ちゃんとした女の子になって、そしたら成哉とずっとずっと一緒だ。彼と毎日お米を食べて、成弥の赤ちゃんをたくさん産んで、楽しい家族を作る。
そうだ、人間になったらお兄ちゃん達を探しに行こう。
そしてみんなで幸せに暮らすんだ。