第3章 一人目 案内人ルカ
「こんな風に…例えば触れてなくっても心で相手のことを感じたり、同じものの痛みや喜びを分け合ったり、する事かな」
と、説明をしてくれるも。
私には、やっぱり分かるような分からないような。
いまいちスッキリしない気分で、もう少し掘り下げて訊いてみる。
「……今まで来た方とは、そんな風になったことありますか?」
しばらく返事を待ったがルカさんは私のこの質問には答えずに、自分の胸から私の手を外してそっと元のテーブルの上に戻してから逆に訊いてきた。
「リラちゃんこそ、元の世界でそんな相手はいなかった? 一緒にいると、嬉しいことが余計に嬉しくなるような」
え?
急にこちらにボールを投げ返され、若干焦りつつも思い巡らす。
相手が嬉しかったら余計に嬉しいって事?
同じ痛みを分け合う。イコール、相手が痛いと私も痛いって事。
……彼が悲しいと私も悲しい。
そこでぱっと思い浮かぶのは、私にとって一人しかいない。
「はい、いました、います!! 私の飼い主です!」
立ち上がって大き目の声でそれに答える私に、ルカさんが顎をひいて怪訝そうな表情で応じた。
「飼い主? 猫が?」
「え? おかしいです、か?」
「……おかしかないけどね、犬なら分かるけど僕らは猫だから。普通は親子とか、小さい頃の兄弟とか。まあ、一般的ではないよね」
そうなのかな?
どうも私は彼から見て一般的ではないらしい。
勢いを殺された気分で、再びすとんと椅子に腰を下ろす。
尚も頬に手を当てて考えていると、私の頭にルカさんの大きな手が軽く置かれた。
「……もしそうでも、きみならいいかな。僕も興味あるし」
「何がですか?」
「リラちゃん、おいで。一緒にお風呂に入ろう」
近所に散歩でも行こう、とでもいう感じで。
「は?」
ごく普通の様子でそう言った彼が椅子から立ち上がる。