第2章 リラの旅じたく
「……おや?」
そんなやり取りの直後、どこから何かを聞いたのか、キルス様の声色が変わる。 耳を澄ますも私には何も聞こえない。
彼は顔を上げ、私やビルなどの建物を越え、もっと遠くを見るような目をしていた。
「どうしたんですか?」
そんなキルス様の様子に私が声をかけると、彼は両方の眉を寄せて少し厳しい顔をした。
「成弥が少し困ったことになってるらしい。 危険かも知れないけど、リラ。行ってみるかい?」
「え!? は、 はい!」
私には分からない、でも、キルス様には何かが見えるらしい。
なんだか嫌な予感がする。
困ったこと? 成弥に何があったんだろう。
キルス様は軽く頷いた後に私に向けてすっと手を伸ばした。以前人間に変えてくれた時に感じたのと似たような感覚の、じんわり温かいものが体内に広がり、体がふわりと軽くなる。