第2章 リラの旅じたく
私みたいな動物にとって、死は身近にある。
元々寿命も短いし、私の親や仲間も、色んな原因で死んだのを目の当たりにしてきた。
秋に茶色の葉っぱが地面に舞うように、冬に紅い花が雪の上にぽとりと落ちるかのように、そんな風に、来たるべき日に私たちはひっそりと姿を消す。
だけど人間はそうじゃない。 慣れてないからこんなに狼狽えてしまうのだろうか。
だけど私は成弥と一緒に過ごしてきた日々を思った。
昔、毎日の様に折檻され、食事もろくに与えられなかった彼の少年時代は他の人間のそれとは異なっている。
それどころか、それは私たちに似て、死とそれ程遠くない距離にある、そんな生き方をしていたはずだ。
ふと、気付く。
だから悲しいんだ。
それを解っているから、成弥は自分じゃなくて、他人の痛みがとても辛いのね。
途方に暮れてしまった私ははたと思い当たった。
───────キルス様
そうだ、キルス様に相談してみよう。
もしかして、人間になったら、病気も無くなるのかも知れない。
私はそれから機会を伺い、成弥がジョギングをしに出掛ける短い時間にアパートの外へ出ることに成功した。
ドアにごく狭い隙間を見つけ、その間をぐいぐいと頭で押す。
階段を降り、久し振りにアスファルトを駆ける。
キルス様の居場所は何となく分かっている。
『ここの近所にある、多くの動物たちが眠り祀られている土地に住んでる』
とてもたくさんの動物の匂いのするところ。