第2章 リラの旅じたく
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それから少しの間、淡々と静かに毎日が過ぎて行った。
外の空気はまだ冷たいけれど、もうじき春が来るみたいなぼやけた匂いがする。
成弥はあれから私の病気の事を色々と調べているようで、塞ぎ込む日が多くなった。
私は取り立てて体の調子が悪くなったとかも無く、ただ風邪をひきやすくなった気がする。
そしてそんな日はご飯を食べれなくて、成弥を心配させた。
「リラ。ごめんな」
成弥が沈んだ声で謝り、私の体をぎゅう、と抱き締める。
彼がなぜ謝るのか分からなかったけど、私は目を閉じてそうする彼を暖めるように顔を寄せた。
「もうじきリラの花が咲くよ」
窓の外に視線を移し成弥は呟く。
小さな花が集まり房になってに咲く、良い香りのする花。
私の名前はその花から付けられたという。
春を運んでくると言われている。
今年も一緒に見に行こう。
成弥は私にそう言った。