第7章 リラの療養※
ルカさんが内側から窓を開き、紫色の空から吹き込むひんやりとした外気に目を細めた。
「───ホントに夜が空けたねえ」
ベッドが備え付けてある側の壁にもたれかかったまま、彼の最近の癖なのか冷えないようにと私を毛布ですっぽり包む。
「リラちゃん寒くない?大丈夫?」
「だい、丈夫、じゃない、ですよう……」
「んー?」
彼のわざとらしい、とぼけたような声。
こちらは腰も足も怠いし、喉も痛い。
あと、肌もぴりぴりして足の間にも凄い違和感。
だけどまた、私を労わってくれているようなルカさんの態度にほっとしている。
「さっきの、ちょっと、あれは……ルカさんらしくない、です」
ひりつくみたいな余韻が覚めてようやく落ち着いてきた私は、責めるようにルカさんを睨み抗議した。
「そうかな」
不貞腐れる私に微笑みかけながら自分の許へぎゅっと引き寄せる。
「何? リラちゃんの中の僕って」
「………それは、ルカさんは穏やかで本当はとても優しくて?」
「本当はって。それは有難いね……でも自分でも驚くけど、たまに怒りとか憎しみとか、そういうのに呑まれそうな時はあるよ」
「ルカさんが、ですか?」
ここの世界に来た時最初は他人を傷付けた、そんな話を前にしてくれたのを思い出した。
とはいえ、今の彼からはそういうものを想像出来ない。
「最初の時はあんなに、気を使ってくれてたのに」
まだ気が収まらない私はつい愚痴ってしまった。
「……前に、思念を入り込ませるのって繋がりが必要って話したの、覚えてる?」
「……あ、え? はい」
「あれね、中に入らなくても大体相手の状況も分かるようにも出来る筈なんだけど」
「そうなんですか?」
そういうの、記憶にあるような。
あれは……
緑色の髪の何かがふっと頭に浮かび、形になる前にルカさんの声が被さった。