第7章 リラの療養※
「ただいま。 熱は……ん。顔色も良くなったみたいだね」
軽いノックの後に顔を出したルカさんが、いつものように彼が熱を計ろうと私の頬に触れた。
だけど、私は近付いてくる彼をついと避けてしまった。
「リラちゃん?」
拗ねたように顔を背けている私に、彼がどうしたの、と怪訝な様子で覗き込んでくる。
「怒ってるの?」
そうやってルカさんが穏やかに訊いてくるので、喉の奥がつんと痛んでくる。
「だって、だってルカさんってまた意地悪だもの」
「え?」
なんでこういう時、すぐに泣いてしまうんだろう。
こんな子供みたいな態度に自分が嫌になる。
「全然、わ、私に触ってくれないし」
「いつも触ってるけど……」
「そうじゃない」
更に涙が出てきて酷い顔になってそうだ。
『もう放っておいてください』
彼に投げつけた言葉。
それなのに今言ってる事はちぐはぐで。
こんな事をしていたら本当に嫌われてしまいそうな気がした。
「えっと…鼻かんだほうがいいと思うよ?」
良くないとは思いつつも色んな理由で彼の顔を見れなかった。
「ルカさん、ル、カさんは、私の事、……嫌いになったの? 私が子供っぽいから? 我儘だから?」
「嫌いに……」
ぐすぐす泣く私を落ち着かせようとしてくれているのか彼は何も言わずぽんぽん、といった感じで頭の上に手を乗せた。