第7章 リラの療養※
すこし気分転換に散歩しようと思っただけなのにな。
やや不貞腐れた気分で、ぼふん、とベッドにひっくり返った。
窓際の紫色の小さな花がまた視界に入る。
枯れては脇から蕾が開き、重なり合う濃い紫の花弁。
少し開け放した窓の隙間から吹く風に、鈴のようにその花を震わせた。
「…………」
ルカさんはこんな所でいつも昼間何をしてるんだろう?
仕事と聞いてはいる。
でも治安の良くない繁華街。
娼館? まさか他の女の人と……?
「いやいやいやいや!」
仮にそうだとしても私には何も言う権利は無い。
……でも、ルカさんってパーティの時みたいに、絶対誘われそう。
あの時、挨拶みたいに彼に抱きついてキスをしてきた女性の事を思い出した。
最近、というかあのパーティの夜から私に何もしない彼を思う。
それって、もしかして必要がないから?
むしろ保護者的な態度の私への最近のあれこれは既に私をそういう対象として見れなくなっているから、とか。
もう有り得過ぎて怖い。
それとも、自分の兄とあんな事をした私を本当は軽蔑している?
無理矢理とはいえ意に沿わないあの行為に自分の体が汚れた気がした。
お兄ちゃんが泣いていた。
ずっと彼の心が叫んでいた。
『俺を殺してくれ 』
だから私は痛いなんて言えなかった。
間違っているのは解っている。
けれどルカさんは、彼はどう思っているのだろう?
上にかざした自分の手のひらを眺めた。
…お兄ちゃんの怪我はもう治ったのかな。
穏やかなお天気とは裏腹に、そんな何とも言えない気持ちで午後を過ごした。