第7章 リラの療養※
あの瞬間。
……お兄ちゃんにされた時視たあれは、私の意識が朦朧としてたせいでほんの少しの記憶しか無かったけど、私の家族はあんな風にバラバラになったのだと理解した。
『泣かないで』
殺されてしまった私の小さな妹たちとお姉ちゃん。
実際にお兄ちゃんにされた事や体の傷よりも、ただただ心が痛かった。
『お願いだ。泣かないで、リラ』
目覚めてからもずっと泣き続けていた私にルカさんはそばについてくれていた。
私がお兄ちゃんの所にいた間、家に帰らずここに泊っていたという。
『どうしてもきみが心配だったから』
何があったのか詳しくは聞かれなかっだけれども、その様子から彼もまた視たのだろう。
そんな風に、私たちは同じものを共有しながら旅をしてきた。
ルカさんはとても大事な人だ。
……私は私の個人的な事で、彼を煩わせたくなかった。
だけど結果、こんなに手間を掛けさせているのなら世話はない。
なぜあの人はこんな私のそばに居てくれているのだろう。
そんな事を考えていて、私はまだ彼にきちんとお礼もお詫びも言っていなかった。
「リラちゃん、体調はどうだい?」
「あ、はい。大分良くなったみたいです」
夕方になってルカさんが戻り、おでこを合わせて私の熱を計る。
触れた体温と外の空気を纏った彼の匂いがしてほっとした。
「うん、悪くないようだね。 少し汗をかいたのかな。 身体を拭いてから食事にしよう」
「あ、あのルカさん、私自分で出来ますから」
「リラちゃんはじっとして」
「でも」
「今無理するのはいけない」
何を言っても無駄らしい。
ルカさんはテキパキとタオルと洗濯したての寝着を用意し、私を膝に乗せた。
こうやってよく成弥に、体を拭かれたり爪を切られたりしてたなあ。
抵抗を諦めた私は借りてきた猫のように大人しくされるままになっている。
そして困ったことがもう一つ。
「……っん」
ルカさんがここの所、毎晩私に触れるのだ。
それは私に負担にならないようになのか、濃厚なものではなかったけど、身体が火照って別の意味で困ってしまった。