第7章 リラの療養※
ビー君の次に見付けたのはお兄ちゃんの家だった。
お兄ちゃんが妹と気付かない私に暴言を吐き、怒ったルカさんをやっとの思いで一旦、お兄ちゃんの家の外に連れ出した。
ここに残ると言い張った私に対して、ルカさんはとても呆れた顔をして。
そのあと、じゃあ僕も思念でここに残る、そう言う彼をも私は遠ざけた。
だってお兄ちゃんに掴みかかった彼の剣幕を見るに、また同じような事があった時に穏便に済ませるなんて絶対無理だっただろう。
しばらくその場で考え込んでいたルカさんが続けた。
『きみの事を彼に打ち明けよう』
『そんな事をしたら余計にお兄ちゃんが悲しみます……だって、私の状況も』
人の世界で死んだ家族…兄弟たちの話はお兄ちゃんから聞いた。
だけど今の私も、それ程変わりはないから。
ルカさんは私の先の言葉を察してくれたけど、首を縦には振らなかった。
『あの時、……ビー君の件で言ったはずだよ。危ない時はせめて僕を呼べと。きみには分からないんだろうが彼は危険だ』
『ルカさんの事、私は最初、お兄ちゃんみたいに思ってました。辛い事があり過ぎて少しやけになってますけど、凄く家族思いの人なんです』
『それからこれも言った。何かあればきみを連れて逃げるつもりだと。行かせる気はない』
いつもの様に静かな調子でルカさんは言ったがその目は本気だと物語っていた。
だけど、ようやく会えた、血が繋がった家族の心が傷付いている。
私も引くつもりは無かった。
『……分かりました。ではもう、私はルカさんと一緒にいるのはやめます』
ルカさんの顔は見れなかった。
拳を握り、ただ感情を殺して言葉を組み立てる事に集中した。
『もう帰って。私の事は放っておいてください』
次に顔を上げた時、彼の姿はそこに無かった。
そんな酷い事を言ってしまった私は、もうルカさんに嫌われたのかと思っていた。
だからここのベッドで目が覚めて、ルカさんが酷く慌てた様子で私の顔を覗き込んだ時はとても驚いたのだ。