第7章 リラの療養※
お兄ちゃんの所からルカさんに連れ戻されて私の体が回復するまで、少し時間がかかった。
怪我もそうだけれど微熱が続いて身体が怠い。
ルカさんは完全に回復するまで動かない方がいいと言って、私を宿で休ませてくれていた。
彼は仕事か何かで昼間はどこかに出掛けているようだ。
そして夜に戻ってくるのだが、様子がおかしい。
一緒にいる時はほぼほぼ私に触れているか手の届く距離にいるし、怪我がある程度治った今でもお風呂にも一人で入らせてくれない。
……と、いうか、浴場まで私を抱いて行く始末。
昼間も私に何かあったら困るから、と宿の主人(風貌からしてウマ族の人かな?)に様子を見に来るように頼んでいる。
「リラさん、ルカさんから食事を給わってます」
コンコン、というノックと共に宿の主人が昼食を運んで来てくれた。
ベッドサイドのテーブルに置かれたそれはまだ食欲の湧かない私に合うように新鮮な果物とスープといった簡単なものだったけど、ルカさんが私の容態を見て毎朝用意しているとか。
「最初は怪我人を泊めるのはどうかと思ったんですが、熱心に頼み込まれて。リラさん愛されてるんですねえ」
主人はその長い顎に手を当て、うんうん、と頷いている。
「食事も全部自分でやると言ってこうやって毎日マメに……いや愛ですよねえ」
「……はあ」
こうやって主人はルカさんが戻るまでの間ちょくちょく顔を出して、毎日十回位愛を連呼する。
「では、私はこれで。 リラさんくれぐれも歩き回らない様にして下さいよ。 あ、その花はルカさんからです。 ちなみに花言葉は」
「愛ですね……」
テーブルの上にはかわいらしいスミレの花が飾ってある。
その花びらをそっと摘まんで指を引っ込めた。
ルカさんってあんなに過保護だったかな?
そうでなければ私は、随分と彼に心配を掛けてしまったらしい。